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懐中要薬「清心丹」とは何か?

懐中要薬「清心丹」 とは何か?

森茉莉のエッセイ「父の帽子(幼き日々)」から

森茉莉のエッセイ「父の帽子(幼き日々)から

森鴎外の愛娘、森茉莉のエッセイ「父の帽子(幼き日々)」の中に・・・・。
「(前略) 終には、ただ低い、意味の無い声と、寝床にひき添っている母の着物の、清心丹の匂いとが、夢とも現とも分からない私の頭を、いよいよ夢の中へ引きこむ音楽となるのだった。…」とあります。

幼少期の著者が母の傍で眠りにつく場面。清心丹独特の心を鎮める香りが漂うように描写されています。

セイシンタン…清らかな響きを持つこの名薬は明治8年に発売、その後大正から昭和にかけて多くの方に愛され、この種の懐中保健薬の草分けとして認知されていました。
時代と共に大衆に広まりそして消えた「懐中用薬・清心丹」とはどのようなものだったのか、振り返りたいと思います。

製品形態について

昭和初期の清心丹

清心丹の丹には「丸剤」という意味があります。
薬包紙を開けると直径3oほどの小さな生薬の粒、コーティングには本物の銀箔です。
銀には抗菌性があり中身の生薬を変質から守るはたらきがあります。
密封保存している清心丹は50年近く経つ現在もカビひとつ生えず輝きも失っておりません。

初期の品揃えは携帯用の45粒包装から桐箱入の1,200粒包装まで、全7種もありました。医薬品ながら嗜好品的側面もあったため大小様々なサイズを揃える必要があったのです。
写真は標準的な150粒のセットです。
金属製の携帯ケースが付属しています。銀粒を手に持った人魚が彫り込まれたとても凝ったデザイン。この銀ケースから清心丹が出てくる様は当時の人々にはさぞハイカラに映った事でしょう。
ちなみにこのセットは大正期で30銭、現在で言うと約1,500円位の値段でした。

効能・成分について

清心丹の効能書きには次のようにあります。

船車酒魚の酔、過食には25粒位、暑気あたり、腹痛、下痢には40粒位。
はげしい時は反復服用。飲食後に7,8粒ずつ常用すると消化を進め胃腸を健全にし腐敗飲食物、
悪疫等に侵されにくい。
頭痛、めまい、心身疲労の場合、6,7粒を服用すると気分を爽快にする。
痰・せき、のどのかれ、 息切、または音声を使う場合には5,6粒づつ口中で溶かして嚥み下すこと。
口中を清涼にし口臭・口熱を除くには2,3粒を噛み砕き口中で溶かすこと。

万能薬のような幅広い用途になっていますがその根底に
「胃腸が栄養分を吸収することで代謝や抵抗力が生まれる。胃腸を健全にして消化を助ける事が様々な悪疫・愁訴の改善・予防につながる。」
という明解な健康観がありました。
添付文書にも明記しているこの信条を叶えるため当主自ら生薬を厳選し配合量を決め清心丹を完成させたのです。
その処方は…

清心丹の構成生薬とその古典的効能
   ●阿仙薬 … 止瀉、整腸、去痰         ●甘草  … 消炎解毒、補気強壮
   ●桂皮  … 発汗、解熱、鎮痛         ●丁子  … 芳香健胃、鎮痛
   ●茴香  … 芳香健胃、去痰          ●縮砂  … 芳香健胃、去湿
   ●木香 … 芳香健胃、行気           ●甘松  … 芳香健胃、矯臭
   ●薄荷脳、龍脳 … 矯味矯臭、清涼

阿仙薬(アセンヤク)、桂皮(ケイヒ)、甘草(カンゾウ)、丁子(チョウジ)、茴香(ウイキョウ)などの健胃・整腸系生薬が効果の柱となり、これに芳香性生薬の木香(モッコウ)、縮砂(ショクシャ)、甘松(カンショウ)が加わります。
これらはお香の原料としても使われるもので清心丹独特の香りの正体です。
品の良い香りでご婦人ファンも多かったため芳香性生薬は特に上等品を選んで配合していました。
さらに清涼感の高い薄荷と龍脳を加えて丸く形成し最後に銀箔で仕上げます。
口に含み噛むと心を鎮める香りが広がり、消炎・清涼成分がのどの違和感を和らげます。
飲み込めば健胃成分が直ちに胃腸を整えるように働きました。  
まだ衛生事情が悪く腹痛や発熱など急に体調を崩す人が多かった時代、清心丹が広く浸透した事はその確かな効能の裏返しでもありました。

製造方法について

江戸期から生薬を扱ってきた木薬舗ですが清心丹は初めての本格的な「丸剤」商品でした。
丸剤は漢方薬伝統の剤形で揮発しやすい成分を安定して封じ込めることができ長期保存に適しています。
また腸で作用する成分を胃液の分解から守る工夫も施せます。
丸剤師という専門の職人が各生薬を混ぜ重ねる順序やつなぎとして加える飴・蜜などの量を変えながら成分の溶け出しを調整していました。
現在はエキス顆粒で使われる事の多い桂枝茯苓丸や八味地黄丸など「丸」のつく名の漢方処方は本来、丸剤として製造されるべきものです。
清心丹も繊細な芳香成分を多く含む事、そして懐中用薬という携帯性面から丸剤として製されました。
発売当初の実製造は丸剤師が「古式製丸法」と呼ばれる生薬混合から製丸まで手作業で行う方法で行っていました。
その後、増加する需要に応えるため当時としては最新の製丸機を導入します。
これにより医薬品として最も重要な重量・含量の均一性が保てるようになりました。
最終的な仕上げは依然、丸剤師が行いましたが製造の手間は大きく減り大量生産が可能となりました。

大正期の丸剤自動製造器

清心丹を受け継ぐもの

大正から昭和初期にかけて清心丹はアジア諸国へも輸出されるようになり販売数量は拡大を続けました。
その後太平洋戦争を経て戦後も製造を続けましたが高度経済成長を迎える頃、岐路に立つことになります。
生活は豊かになって絶対病気にかかれないという危機感を持つ人が減り、疾病予防の重要性は確実に薄れました。
医療もその都度、症状を抑える薬剤に頼る対症療法が主流となりました。
そして作用が緩和な予防薬は次第に下火となって行きます。
さらに上質な生薬原料が高騰し入手が難しくなったこともあり、清心丹は昭和40年代に入りやむなく製造を休むことになりました。

人形町センタービル


それから約半世紀たった現在、まるで先祖帰りのように「自分の体は自分で守る」セルフメディケーションが叫ばれるようになっています。一人ひとりの予防意識と習慣の大切さがあらためて見直され始めました。

こうした流れから清心丹がかつて担っていた使命を平成の世にもう一度問うべく生まれたのが「清心丹シレナールS」です。旧清心丹の嗜好的な香り・風味の要素は除き健胃性作用を主軸に原料を再構成、さらに現代視点での新たな天然健康素材もプラスしました。
好みに応じて摂る量を自由に調整できるサプリメント(和漢植物抽出物加工食品)としてリニュアルしています。
形状は同じ丸粒ですが職人技に頼っていた製丸工程は現在、専門工場で完全にオートメーション化されています。
発売してから既に多くのお客様から復活を懐かしむ声や使用実感に基づく喜びの声を頂戴しました。
弊社伝統の本流にあるこの清心丹シレナールが時代を超えて現代の健康づくりに貢献できる、続々と届く反響が私たちにとって何よりも励みとなっております。



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